【書評】医学で合格る勉強法

「医学で合格る勉強法」

著者:長井敏弘

紆余曲折

著者は、他人が言うのも失礼ですが、紆余曲折の人生を歩んできた方のようです。高校卒業後、浪人して大学に入学し、卒業後は公務員になったものの1年足らずで辞め、その後、土木作業員(日雇い)など数々の職業を経験したそうです。キャバレーの店員をしていた時に医師になろうと一念発起し、2年医学部受験に失敗したのち、27歳時に3度目の正直で広島大学医学部の合格を勝ちとったそうです。この時の勉強の工夫が、この本で紹介した各種の勉強法のスタートラインになっているとのことです。

著者の興味深い経歴はここまでで終わらず、医学部在学中に河合塾で数学講師をするとともに、自らも塾を始め、医学部卒業後は医師として研修をせず、ヘッドハンティングされた代々木ゼミナールでカリスマ数学講師として全国を飛び回り、参考書を執筆していたそうです。たまたま飛行機で再会した医学部での恩師に「医者に戻れ!」と怒られ、方向転換して医師として研修を開始し、現在は医療法人や塾・予備校などの代表を務めているとのことです。テレビにレギュラー出演したり、広島では有名な方なのかもしれません。

前フリが長くなりましたが、この本には、心理的に良好な状態を維持し、学習効率を高く保つノウハウ、また、医学的に正しい暗記法や、睡眠・食事などを含めた日常生活での注意、学習上のコツなどが書かれていました。

内容

以下、簡単に章別内容です。

第1章 勉強意欲を途切れさせない5つの方法

①「強く信じることで、勉強意欲を引き出す脳内ホルモンを分泌させよう!」②「常に実力より少し上の目標を設定すれば、やる気も掻き立てられるし、油断も防げる!」③「好奇心で、勉強意欲と記憶の強度を同時に上げよう!」④「勉強仲間やライバルをつくり、脳内をドーパミンで満たしてやろう!」⑤「大きな夢を掲げ、やる気が衰えてきたときにはそれを思い出そう!」以上のように、先生流のやる気の出し方5つが書かれていますが、特別「医学」を感じるものではありません。

第2章 脳の仕組みをフル活用する暗記の技術

①【4Dイメージ法】(見る・聞く⇒感覚を伴うイメージを展開⇒声に出す)による効率よく暗記する、②【想定外イメージ連結法】覚えにくい情報は、無理やりつなげて突拍子もないイメージに加工することによって、記憶しやすくなる、③【右脳ペースト法】右脳で覚えた方が記憶は強く固定化されるので、テキストを丸ごと画像的に覚え込む、④自室以外で、日常とは違う環境の中で暗記すると保持されやすい、⑤十分な睡眠時間を確保し、起きた後に少し勉強するのが一番効果的、⑥覚えることと思いだすことは別物なので、試験近くになったら、すべての知識を再確認する

第3章 効率よく成果を上げる!アウトプット重視の勉強術

①【実践的反復学習法】反復学習は知識の習熟に効果的であるが、単純作業なのでつまらないので比較的簡単な問題を選んで行う、②【パターン認識学習法】頻出・典型問題を反復学習しておけば、ほとんどの問題に対応できるようになる、③【実践的な思考力】応用問題や実践的な問題にはこれといった解答パターンがないので、じっくり考える経験を重ね、思考力を鍛える、④【仲間との議論】脳が最高に活性化する議論やディベートを活用して思考力を上げる、⑤【思考漬け週間】じっくり考える力を養える時期を持つ、⑥出題者の意図を探る習慣をつける、⑦お互いに質問したり教え合ったりすることで、高い学習定着率を得る、⑧全体から細部へと勉強していくことで理解が深まる、⑨テキスト・問題集をマスターするとは、わからないところやできないところを見つけること

第4章 脳と心の状態を自在に整える技術

①【カプリシャス法】勉強をぶっと続けるより、疲れてきたら勉強をやめ、体を動かして脳を休める方が結果的にはより長時間勉強できる、②【コマ回し法】勉強は短期集中で!、③【?はてなノート】わからない部分はあとから人に聞くようにすれば集中力は途切れない、④【ひとり授業】ひとりで誰かに教える学習をする、⑤【プレパフォーマンス・ルーティン】成功体験につながるルーティンで勝負どきに集中力をあげる、⑥適度な運動で集中力アップ、⑦【ひとり認知行動療法(スランプ対処法)】マイナス思考を自覚したら行動によって解決する、⑧【激しい運動(スランプ対処法)】激しい運動でマイナス思考を追い払う、⑨【ヤコブソン筋弛緩法】試験前の緊張を緩和して実力を出せるようにする

第5章 成果を上げやすい暮らしと勉強の習慣を身につける!

①勉強の成果を上げたければ、勉強以外のことにも気を配る必要がある、②平日1日の勉強時間は8時間まで、③2時間おきに休憩でメリハリ、④食事はご飯主体の和食が理想で1日3回・腹八分目、⑤肉体疲労回復の成長ホルモンと精神疲労回復のセロトニンを出すようにする、⑥質の高い睡眠で効果的な勉強ができる、⑦睡眠時間を90分の整数倍にしてスッキリ目覚めを実現する、⑧免疫力アップで不意の病を避ける、

第6章 試験直前のコンディショニングはこう行う!

①試験当日の時間に合わせて勉強も試験に近い形を意識する、②試験直前1週間に新しいことには挑戦しない、③試験当日はいつも通りに

私見

タイトルは、「医学で合格る勉強法」で、独自の命名でさまざまな〇〇法が出てきますが、全編医学的根拠を背景にしたものではなく、自身の医学部受験時の勉強体験、大学予備校における指導経験や塾・予備校代表としての経験に、医学的なエッセンスを少しプラスした勉強法と言えると思います。

同様に医師による著作ですが、先に紹介した林先生の「合格脳のつくり方」のようにシンプルではなく、吉田先生の「合格させたいなら脳に効くことをやりなさい」と似た内容もありましたが、多くは違う内容でした(当たり前、こちらの本は勉強法ですし…)。全体的には中学受験というより、大学受験の子がメインターゲットの勉強法に感じました。

(F)

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