今回は…
『中学受験 第一志望に合格したいなら「社会」の後回しは危険です』 (ダイヤモンド社)
著者:野村恵祐
野村恵祐先生
この本の著者の野村恵祐先生は、中学受験 社会科専門塾「スタディアップ」代表です。社会科専門塾はめずらしく、中学受験社会でGoogleなどで検索すると、上位に引っかかってくる有名な先生です。
野村先生は、大学在学中より大手進学塾、個別指導塾や家庭教師センターで中学受験生を指導し、短期間で社会の偏差値を上げて、志望校の合格させた実績をお持ちのようです。
『コンプリート社会』、『暗記の極意777』など中学受験社会科の教材をプロデュースしていて、それらの内容に大変興味がありますが、値段が高くて手を出しにくいというのが個人的な本音です。
まえがきで…
どの業界でもいっしょですが、不安に思ったり、悩んでいる親を煽る本のタイトルです。タイトルをつけたのはご本人なのか、編集者なのかわかりませんが商売上手ですね苦笑
実際、この本は、ガン子が中学受検から受験にシフトしてすぐにタイトルに惹かれて購入したものです。
「社会ほど、やればやった分だけ得点源になる科目は他にありません」
「社会ほど、入試当日に自分の実力通りの得点が取れる科目も他にはありません」
「国語や算数にばかり時間を割いて、暗記科目の社会でだれでも得点できるような簡単な問題が解けず、不合格になるという間違った戦略、つまり、社会を後回しにしてしまう勉強法こそ大問題なのです」
「社会科専門塾の代表だらこそ書けるような社会のすべてをこの本に凝縮しました」
「社会を後回しにしなかった子ほど、中学受験で第一志望に見事合格している」
まえがきを読んだだけで
「早く社会を何とかしなきゃ!」
という気になってきます。何とかするのは親ではなく、子どもなのですが…汗
以下、各章の簡単な説明です。
第1章 なぜ「社会」の後回しは危険なのか
「中学受験においては、社会こそが早めに固めて得点源にすべき科目であり、社会を後回しにしてはいけない」(勉強した分だけ得点源になる)
「社会こそが、やれば一番簡単に点数を取ることのできる科目だと確信している」(実力相応の得点を取りやすい)
「算数であと1点取るよりも、社会でもう1点取る方が格段に易しい」
「問題が解けるかどうかの違いというのは、覚えているかいないか、その違い」
「社会という科目は、普段から暗記していることと、実際の入試で問われる問題レベルにほとんど差がありません」
この章では、入試配点から社会の重要性を探っていて、4教科の配点が、国:算:社:理=1:1:1:1の学校の存在を強調しています。
しかし、ガン子が志望していた学校において、4教科の配点が、国:算:社:理=1:1:1:1の学校は1校しかありませんでした。国:算:社:理=2:2:1:1というような国語・算数に大なり小なり重きを置いた学校の方が多かったですので、わが家に対しては求心力があった内容ではありませんでした。
第2章 社会を早めに固めて得点源にする方法、教えます!
【Part1 覚えるべき社会の公式編】
その1 都道府県
①各都道府県の名称と位置、②各都道府県の県庁所在地、③各都道府県の形
その2 白地図
①山地/山脈/山/火山、②平野、③川/湖、④盆地/台地、⑤半島/岬、⑥湾/海峡
覚えるべき「社会の公式」は以上の2項目9事項
【Part2 社会の学び編】
基本的に通塾を前提とした勉強法の紹介になります。STEP1 塾で授業を受ける、STEP2 家庭で復習して暗記する、STEP3 問題演習で知識を確認するという3段階の勉強法を推奨しています。
STEP毎の勉強法も解説しています。
第3章 教材しだいで社会の成績は必ず上がる!
【Part1 参考書・問題集の選び方編】
参考書・問題集を「授業タイプ」(自由自在など)、「暗記タイプ」(コアプラス)、「演習タイプ」(問題集)の3系統に分類し、それぞれの役割を紹介しています。子どもの現状に合った教材を与えることの重要性を説いています。
【Part2 参考書・問題集の使い方編】
参考書・問題集を効果的に使いこなすための3つのポイント、①1つの参考書を極める前に、次のものを買ってはいけない!、②問題集で間違えたところはチェックマークを付ける!、③問題演習後は、自分の愛用している参考書で照らし合わせを行う、について説明しています。
第4章 合否を分ける“あと数点”を社会で稼ぐ!
過去問対策の差が合否を決めると断言しています(おっしゃるとおりといえばおっしゃるとおりですが…)。特に社会は過去問対策が有効で、
【Part1 過去問を使った学習の進め方】
【Part2 過去問を使って出題傾向を分析する】
【Part3 過去問を使って出題形式を分析する】
3つのPartで点数をより伸ばす方法を説明しています。それぞれのPartで事細かな記載がありますが、自宅受験組の私(F)が読んでも特に目新しい内容があるわけではないと思いました。
特別付録 社会の公式チェックシート
「社会を得意科目にする土台を作る」との記述があるように、社会の勉強を始めたばかりのお子さんにはとてもよい教材になると思います。
一方、ある程度勉強をしてきているお子さんにとっては簡単すぎて、
「何で今さらこんなことやるの?」
と言われて面倒くさがられるかもしれません(^^ゞ
対象となる人は…
内容はオーソドックスで、既知のものがほとんどという親御さんも多いと思います。かく言う私も…。
付録も含めて、(4~)5年生の初学者か、6年生で偏差値が高くない層がターゲットになる内容だと思いますので、これから本格的に社会の勉強を始める場合、社会の成績が振るわないから勉強し直す場合には利用価値が高そうです。
結論めいたこと…
『中学受験 第一志望に合格したいなら「社会」の後回しは危険です』を読んで、内容的には既知のものがほとんどでしたが、初学者向けに事細かに記載があったので好印象を持ちました。
何ごともバランスは重要ですから、足を引っ張らないためにも、単純に覚えるだけの科目だからといって社会を後回しにして、おろそかにしてはいけないというゆるやかなお話として受けとめました。
ここからは閑話…
もう少し深く考えてみると、この本のキモである“簡単に点数が稼げる”社会の重要性は、志望校の配点(この本にも有名校の配点が紹介されています)によって大きく変わると思います。
首都圏の中学受験で最も多い4科目入試ではオールラウンダーの方が合格しやすいのは間違いありません。特別な個性や能力を見るために1科目入試(算数)や、優秀な生徒を確保するために午後に2科目受験を実施している学校も最近増加してきていますが、まだまだ選択肢(受験できる学校)が多くありません。
となると、多くのお子さんは4科目で受験することになりますので、配点が高い方により注力するのはひとつの方法として間違いではないと思います。
ガン子の受験のため、志望校の数年分の入試結果をながめていたら、どの学校も合格者平均点と受験者平均点の差が最も大きかった科目は算数でした。過去ずっとそのような状況です。実際、この本で例示されている学校も算数の点差が一番大きいです。
自分の主張に合うようにデータを解釈するのは世の常ですし、傾斜配点があって、より点差がつきやすい科目があれば、そちらをなんとか…という考えを持ってもおかしくないと思います。
単にわが家の勉強法の正当化を図っているだけなのですが…(^^ゞ
(F)