「合格する親子のすごい勉強」
著者:松本亘正
「10歳の壁」
難関中学合格率が高いとされる中学受験専門塾代表による著作です。この本で先生はいわゆる「10歳の壁」の存在から、10歳になるまでには、覚えた方が良いことは親が教え、10歳以降は、自分の頭で考える力、自分で答えを導き出す力、物事をつなげて考える力を伸ばしていく必要があると述べています。「10歳以前なら」「10歳以降なら」を併記して、時期によってどのようなことに注意して教育・勉強した方が良いかを解説しています(すべての項目ではありませんが…)。
内容
章別の内容としては、
Part 1 これだけは押さえておきたい「子どもを伸ばす親の関わり方」
どんな社会人になって欲しいかをイメージして教育方針を決める、勉強と習い事は両立させることを当たり前にする、「親や先生の言うことは聞きなさい」は言っていい、努力することを習慣にする、など受験勉強をする前からの子どもとの関わり方について書かれています。
Part 2 子どもの能力が底上げされる「勉強習慣・生活習慣」
漢字・計算・文字の書き方に親が関わる、図鑑のような勉強に関わるもので、かつ本人が好きな本を買い与える、才能を感じさせる子より真面目な子の方が伸び続ける、中高で突然勉強する習慣がつくケースはほとんどない、「勉強は楽しい」と思わせるにはエンターテインメント性を意識する、「これができないと損をする」と言われた方が子どもには効く、など子どもの能力を上げることができる習慣について書かれています。
Part 3 大人になっても活きる「応用がきく子」の育て方
言葉の数は早くから磨かせる、子ども言葉は使わない、語彙を身につけさせるには会話が重要、予習より復習に時間をかける、聴く力がないと10歳以降に伸びにくくなる、「この人の話なら素直に聞く」という第三者を探しておく(10歳以降は親の言うことを聞かなくなるので、指導は塾の先生などの第三者に任せる)、応用問題集をやらせたからといって応用力が身につくわけではない、応用力をつけるために確固たる基礎力をつける、算数の応用力がないときは基礎を徹底して身につける、など受験勉強だけではなく、その後にも役立つ育て方が書かれています。
Part 4 子どもをさらに伸ばす親の「言葉かけ」
失敗にめげない子にするには?、いいことがあったときはどうほめてあげればいい?、勉強に気持ちが向いていないときどんな言葉をかければいい?、できなくても本人が全然気にしていないときには?、など子どもに対するコーチングと言っても良さそうな内容です。意識が高い親御さんなら、すでに実践していることも多いかもしれません。
Part 5 子どもの学力が倍速で上がる「中学受験」の取り組み方
実際に倍速で上がるかどうかはわかりませんが、このパートは中学受験の実践的アドバイス集です(細かくはありませんが…)。中学受験の勉強は3年生の後半からはじめる、私立の難関校に合格させたいなら塾なしではかなり難しい、試験の見直しは欲張らない、ミスが減らない場合は4つに分類してみる、など我が家には耳の痛い内容が並んでいました。
私見
先生は小学校6年間ずっと詰め込み教育をし続けるだけでは、長期的に見たときに伸びないと述べているものの、12歳までなら伸びない子はいないという考えのもと、生徒を指導しているようです。
・応用問題を解けるようにするには、とにかく基礎を繰り返す。→地頭を良くする
・全教科をバランスよくアップさせるより、まずは1教科を得意科目にする
・習い事を続けた方が学力がつく
・メモをとる習慣をつけさせるとミスが激減する
・試験前に子どもが緊張している時には、「難しい問題は間違えてもいいんだよ」とあえて声をかける
・苦手科目は2学年下の問題を復習させた方が伸びる
など通塾を前提として、忙しい共働き家庭でも無理なくできるアドバイスを中心に書かれており、どの家庭でも実践できるのではないかと思います。
中学受験向けの本というより、むしろ中学入学前までの子どもの教育に対するアドバイス集として好感が持てる本です(個人的に一部意見の相違がありますが…)。
(F)