【書評】合格脳のつくり方

「合格脳のつくり方」

著者:林 成之

書評の前に…

えーっと、受験本に関する書評はこれで何回(何冊)になったでしょうか?1、2、3、4、、、もう10冊以上になりますね(苦笑)。そんなに買って読んでみて為になったのか?と聞かれたら、うーん…(汗)。でも、何冊も読むことで我が家の中でそれほど不安なく「取捨」ができるようになったと言えると思います。

地方在住・塾なしで典型的な情弱の家庭と言える我が家。家族が一丸となって、約1年の勉強で首都圏私立中学の受験をして合格を勝ちとるという無謀な挑戦では、少なくても情報戦で負けないようにする必要があります。いくつかの本で同じようなことが書いてあったら当然のこと、他の本に書いてなかったら著者独自の考え、など何冊も読むことでわかるようになったのは良かった点です。

それらをふまえて我が家ではどうするか、効率を考えて取捨、言い方を変えれば選択と集中をするようにしました。ただ、我が家には地方在住・塾なしで首都圏私立中学の受験をして合格を勝ちとったという成功体験がなかったので常に不安が付きまとっていました。

「デキ」

受験勉強をする過程で、親としてガン子の「デキ」に疑問符が出てくる場面が多々ありました。集中力であったり、記憶力であったり、その時々で疑問に思うことは違いましたが、そんな中で逆に難関校に入学するような子たちはどうなんだろう?と思うことがありました。遺伝的?家庭環境?10歳の壁までの教育?それらが答えなら、チーン!我が家は終了になってしまいます。今からでも何かできることがないか?そんなことを考えていた時に購入したのが今回の本です。

著者

著者は、日本大学名誉教授の脳神経外科医です。自身の臨床経験から「勝つための脳=勝負脳」を作り出す方法論を確立し、北京オリンピック金メダリストの北島康介選手、ロンドンオリンピック女子サッカー日本代表チームなどに指導歴があるようです。

「脳のしくみ」

この本の前書きには、受験本番で合格という結果を出すには、誰もが当たり前と思っている考え、行動や日常生活の習慣から見直し、変えていかなければならないと説いています。そして、「脳のしくみ」の5つのポイントを理解すると、その解決策が見つかるとしています。

「脳の力」を発揮するために知っておくべき「脳のしくみ」の5つのポイントは、①「ダイナミック・センターコア」(脳における解剖生理機能の呼称の一つ)のメカニズムが考えを生み出す、②人間の脳の働きは、「興味を持つ・好きになること」が第一歩、③良い考えや発想は、正しい判断力と理解力から生まれる、④自分から学ぼうとする自主性とやる気こそ、考えのレベルと上げる、⑤脳は、「脳の本能」を基盤に、そこから生まれる「気持ち」と一体で機能する、です。

あーっ、難しいですね…(汗)。端的に言うと、脳の本能と気持ちを鍛えることで頭は良くなり、根気がなく飽きっぽい、同じ間違いを繰り返す、何度注意しても直らない、口答えばかりする、などの「あるある」事例は、必ず5つの脳の仕組みに原因があるそうです。

内容

以下が章別の内容になります。

1章 勉強ができる子になるために~「脳のしくみ」の基礎知識

脳解剖生理学に基づいて育脳ポイントを説明しています。少し難しいのですが、のちに書かれている実践の方が重要なので読み飛ばしました。

2章 7~10歳は「素質」を育む時期~脳の本能を鍛える

「子どもの素質」は先天的なものではなく、育てることができると断言しています。一方で、育てることができない子もいて、そういう子の脳機能は、「別にどうでもいい」と興味・関心が薄く、嫌いなもの(人)に対して始めから興味を示さない、物事を途中で投げ出す、自分以外の考えや意見を認めないそうです。脳の成長を妨げる「悪い習慣」を10項目挙げ、そのうち当てはまる数が多いほど、親は「わが子には素質がない」と心配になるものの、これらの悪習慣を改めることで、子どもの素質を伸ばしていくことは可能と述べています。

この10の悪習慣を親子で乗り越える考え方、具体策について書かれていました(成人でも悪習慣の改善で素質を育むことができるそうです)。

3章 7~10歳までの「頭のいい子」を育てる親子コミュニケーション

まず、「大人と子どもの脳には、間合いの違いがある」ということを理解する必要があるそうです(早くしなさい!…汗)。そして、ポジティブ志向とは意味合いが違う「足し算志向」を身につけるるために、まず大人が「目標」と「目的」の違いを理解して、子どもの脳に同期発火を起こす声掛けができるようにしましょうと述べています。「足し算志向」とは成功は一つの通過点で、もっと上を目指す考え方とのことです。例えば、「今回のテストは80点だったけど、あなたの力はまだまだそんなものじゃないよね」と声をかけるのが「足し算志向」にするためには正解だそうです。

4章 7~10歳で決まる勉強する環境を自分で整えられる子どもと、整えられない子ども

環境が悪い中では脳機能は伸びず、整理整頓が苦手な子は学力が伸びないと述べています。集中力が高まるように机の上のマイゾーンを作る。塾で伸びる子、伸びない子の違いは何かというと、3章に記載があった「足し算志向」の有無。「足し算志向」がない子は、すでに学んだ単元が出てきた時に「ああ、それもう知っているから」と無関心を生み出してしまい、成長がみられないそうです。

5章 7~10歳までに身につけたい脳が求める驚異の成果を生み出す4つの学習法

①やさしい問題で成功体験を積み重ねる(→勉強が好きになり、自分からやりたい気持ちになる)、②朝早起きして勉強(→夜は時間的にやり残しのリカバーができない、思考力を必要とする学習は朝の方が向いている)、③読み書き計算、暗記学習は実際に声を出して行う(→口にした言葉に対して脳はより正しい判断に近づこうとする)、④ノートは自分の「物語」をつくりながらまとめる(→算数は方眼ノートのマス目に合わせて計算式を書くと、本能が働いて計算力がより正確になる、授業のポイントをまとめてポイントとポイントをつなげる)、という4つの学習法が紹介されています。

6章 苦手科目の放置は、「勉強ができなくなる子育て」の始まり

苦手科目は脳の本能が作りだしているため、簡単には克服できないそうです。「先生が嫌い」「目の前の問題が良くわからない」という単純なきっかけを放置することによって、自分でも無意識のうちに、脳の本能が「できない」方へ働き、「自分にはできそうにもない」という強固な考えが生まれてしまうことが苦手科目の正体だそうです。苦手科目の克服には、5章①の成功体験を繰り返すことが有効です。

7章 11歳を過ぎたら「秀才・天才」が育つ学習法に切り替える

脳は本能と気持ちが一体化することで機能するので、そんなことムリ!できない!と否定しないような「不可能を可能にする」考え方を身に付けることが重要だそうです。

8章 勉強とスポーツの両立~「文武両道」の才能をもった子どもの育て方

文武両道には「空間認知能」が重要だそうです。中学受験に「武」は関係ないですが、「スポーツができる子は勉強ができない」、「成績のいい子は運動が苦手」という考えは、何の根拠もない思い込みで、「文武両道を目指す過程が子どもを伸ばす」と述べています。しかし、すべての子に適応できる話ではなさそうです。

9章 受験期の子育てと脳のしくみを活かす受験勉強(実践編)

ここでは、生活リズムを作ること、成績を上げるには早い時期から時間をかけて勉強をして定着させていくこと、学習習慣を身につける時に周囲の大人の協力で成功体験を積み重ねることができることが中学受験では大切なことと述べています。

参考書は「これ」というものに絞り、徹底的に使い込む方が勉強の仕方としては正解。記憶する時は中途半端にしないで、最後までしっかり覚えてから次の勉強に進まないと、新しいことをやればやるほど、次々に前に学習したことを忘れてしまうのが脳のクセだそうです。

「マイゾーンで集中する習慣を身に付ける」→「予定時間の半分で勉強を終える」→「半分で終えたら、量を倍にする」という3段階の方法が◎。

失敗例問題集ノートが有効。

10章 受験本番で才能を発揮する5つの脳科学的戦略

①「解答する自分の脳」を整える、②試験で実力を発揮する朝食、③脳の本能を克服する「気持ち」の科学、④実力があっても、試験本番で失敗する脳のしくみ、⑤試験会場で実力を発揮する脳科学的な戦略、の5つが書かれています。ここでのポイントは、統一・一貫性の本能にどう対処するかです(方法論的には対処可能)。

私見

人間、叱られるより褒められた方が気持ちが良いのは当たり前ですが、受験勉強でもとにかく成功体験を積み重ねることが重要であると強く認識させてくれた本です。この本には、学力がない高3に小学生の問題を解かせて、とにかく成功体験を積み重ねるように仕向けて、結果として偏差値を上げた実例が挙げられています。

今思い返せば、ガン子の場合、成功体験を積み重ねる前から、元々の性格に現状に満足しない「足し算志向」の傾向があったので、同じクラスの友だちが絶対していない、絶対できないような長時間の勉強に耐えられたのかもしれません。

(F)

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