中学受験とは直接は関係ありませんが、中学入学後はおそらくどの学校でも避けては通れないICT教育。
前回の その1 に続き、ICT教育 その2 にお付き合いください。m(_ _)m
今回はクラウドサービスのClassiやZoom、デバイスの選定について書きます。
Classi
Classi(クラッシー)?
もちろん、女性誌CLASSY.(クラッシィ)ではありません(笑)。
Classiは、ベネッセとソフトバンクがタッグを組んでICT教育の推進を目的に設立された会社で、提供している教育プラットフォーム名も同じです。
ベネッセは教育・家庭学習に関する情報を持ち、ソフトバンクはクラウド技術やネットワーク環境構築といったノウハウを持っているので相互補完と言えそうです。
学校で使うタブレット端末に宿題や小テストなどを配信するSaaS(サース)型のクラウドサービスを提供しています。
ご存じでない方のためにSaaSについて簡単に説明しますと(ご存じの方は1ブロック飛んでください!)、SaaSとは、「Software as a Service (サービスとしてのソフトウェア)」の略で、クラウドで提供されるソフトウェアのことを指します。ユーザー側がソフトウェアをインストールするのではなく、ベンダー(プロバイダ)側でソフトウェアを稼働させ、ユーザーはネットワーク経由でソフトウェアの機能を利用します。
本題に戻ります。
Classiは、中高一貫校、中等教育学校等を含む高校を対象としており、全国の高校の”2校に1校”、50%が利用していると公表されています。
Classiには、「授業・学習コンテンツ」「生徒カルテ」「コミュニケーション」の3つの機能があり、「授業・学習コンテンツ」は中学1年生〜高校3年生の授業用教材と全教科2万問を用意しています。
全教科2万問!これはスゴイ数字ですね。さすがベネッセです。
新型コロナウイルス感染症の拡大のため多くの学校は休校中ですが、先日Classiが2日ほどシステム障害で使用できなくなり(高負荷が原因)、ツイッター上でプチ炎上していました。
やっと落ち着いたかと思ったら、新年度ですから再び高負荷になってまたアクセスしにくくなりました。
このような状況下にもかかわらず、4月9日に『学校活動を休止する全国の高等学校のうち、教育プラットフォーム「Classi(クラッシー)」を未導入の学校に対し、機能限定版を無償にて提供する』ことを発表しました。
普通に考えてちょっとどうかと思いますよね(苦笑)。
また、アプリがふざけた内容で酷評されていることが多いためか、内容がキチンとした評価に対してもデベロッパとして感心しない回答をしています。
ということで、Classiはまだまだ改善の余地がありそうですね(苦笑)。
教育大手と通信大手の合弁会社だからClassiは安心と考えてしまいがちですが、いまいちどネット技術にはリスクがともなうという出発点に立ち返る必要がありそうです(そもそも根本的に電源が喪失したら終了…)。
営業にだまされて(⁉)すぐに飛びついて、その後も業者に丸投げしてしまうのではなく、学校はリスク管理も含めて責任を果たしたうえで利用して欲しいですね。
Zoom
前回紹介した記事に静岡聖光学院ではZoomを使用していると書いてありました。
Zoomは、テレビ・Web会議ツールで、いつでも、どこでも、どんな端末からでもWeb会議を実現できるクラウドサービスです。簡単に言うと、複数人が同時に参加可能なビデオ・Web会議アプリケーションです。
Classiは、ICT教育向けのクラウドサービスですが、Zoomは、教育に特化したものではないものの教育での利用も可能です。
ここで昔からあるSkypeではダメなの?何が違うの?という疑問がわきます。
(Skypeはかつてかなり通話でお世話になりましたが、最近は使っていません汗)
Skypeは個人アカウント同士のつながりがもともと基本になるため、参加者のIDをお互い登録する必要があります。最近はアカウントを持たなくても会議に参加できるようになりましたが、少なくても会議の代表はアカウントが必要です。
ZoomはURLを共有するだけでオンライン上の会議室を利用できるので、Skypeと比較して手軽さがあります。
2020年4月現在の最大利用者数は、Skypeが50名(自分以外の49名)、Zoomは100名(アップグレードで最大1,000名)のため、多くの人数をカバーするためにはZoomを選択する必要があります。
最近、Zoomは利用者の急増によってネットセキュリティ専門家の関心を集め、彼らの調査によって安全面の不安要因が次々と浮上してきています。そのことに関しては、東洋経済オンラインの記事やニューズウィーク日本版の記事をご参照ください。
セキュリティに関連して、Zoombombing(ズーム爆撃)という不審者が割り込んで会議などを妨害する行為が問題になっています(下の埋め込み参照)。
また、東京大学は、UTAS (UTokyo Academic affairs System)という東京大学学務システム内にURLを公開してZoomを利用していますが、こちらでも問題が山積のようです。
Zoomは、急成長したものにはどこかひずみが生じるという好例なのかもしれません。
休校でZoomなどのWeb会議ツールを使用せざるを得ない学校のICT担当者はセキュリティの問題に頭を悩ませているところだと思います。
ハードウェア導入への関心
個人的にPC、タブレット、ガジェットには詳しくないのですが、ICT教育をする場合に学校がどのデバイスを選択するかの決定過程が気になります。
タブレットなら、例えばApple (iPad)なのか、PC(ノートパソコン)なら、例えばGoogle (Chromebook)なのか?Windows (Surface)はどちらもありますね。
アップル・ティーチャーが学校にいればApple製品 (iPad)を選ぶ可能性が高いはずですし、Appleにこだわりがなく、タブレットよりPCと言うなら、ChromebookやSurfaceになるでしょうか?
ハードはタブレットならiPad、PCならChromebookが本命なのかなと思っています。
ソフトウェア・アプリケーション
ハードが決まってもソフトウェア・アプリケーションは?
これを使いたいというソフト・アプリがあれば、逆にそれを使えるハードを選ぶということもあるでしょう。
Classi、iTunesUのような教育関連のサービス以外に、Zoom、Microsoft Teams、Google Hangouts Meetといった授業に使用できそうなビデオ会議ツールもあります。
ソフト・アプリもサポートがないのか、あるのか、あるならどの程度までか、どのくらいの金額かで学校の選択が変わると思います。
学校にPC、タブレットやガジェットに詳しい先生がいなければ、採用の主な理由が金額的なものになる可能性も否定できません。
現状は、会議(授業)ツールはZoomが一番使用されているようです。Zoomがこのまま独り勝ちを維持できるか、あるいは群雄割拠の時代となるのか興味がありますね。
より良い環境で
今回のClassiのようにクラウドサービスがシステム障害を起こすと、出席を取ったり、課題を提出させたり、授業を配信する予定だった学校も対応に追われてしまいます。
また、ZoomなどのWeb会議ツールはセキュリティの問題が注目されてきており、ICT教育が成熟して安全かつスムーズに行われるようになるのはもう少し時間がかかるでしょう。
今回の新型コロナウイルス感染症では緊急事態宣言が出て、首都圏の休校は長期化しています。休校下で新学期からオンラインで授業を開始した、あるいは、近々に開始する予定の学校も多いようです。
親としては、自分の子どもが入学した学校で、子どもが少しでも良い環境でICT教育を受けられることを願うしかありません。
決して安い買い物ではありませんから、学校は、ハード、ソフトともじっくり内容を吟味して、採用を決定して欲しいと思っています。
中学受験生なら、これからはICT教育を積極的に行っているか否かを学校の評価軸に入れてもよいかもしれませんね。
(F)